お母さんの思いが形になる喜びを感じ、恵那市を「ベビーカーの似合うまち」にしていきたい
市立恵那病院 開設者 恵那市長小坂 喬峰
2007年5月、恵那市唯一の産院が、医師の高齢化と後継者不足によって閉院となりました。当時、医院存続を求めるお母さん方が署名運動を起こし、私の手元に約10,840名の署名を添えた要望書が届いたことは、今でも忘れられません。それらを真摯に受け止め、市長として、このまちで3人の子どもを育てた父親として、「また必ずお産を再開させたい」という強い想いのもと、最大限の努力を続けてまいりました。 子どもは家庭の宝であり、地域社会の宝であり、恵那市で暮らす子ども達は、一人ひとりが大切な“えなっ宝(子)”です。 しかし皆様もご存じの通り、産科医不足は全国各地で深刻化するばかり。人口5万2千人弱の小さなまちで、新たに医師を集めて産婦人科を開設することは、極めて難しい状況が続いておりました。
産科医確保に苦戦を強いられる中、明るい兆しをもたらしてくれたのが、2010年に発足した「恵那市公立病院等の在り方検討委員会」です。市内の医療機関をはじめ、地域の協議会や市民団体から代表者が集まり、地域医療の在り方について時間をかけて検討を重ねてまいりました。その結果、市立恵那病院の再整備事業が決まり、 産婦人科開設に向けた人材の確保・育成に、地域を挙げて取り組む体制が整ったのです。 そしてこの度、素晴らしいご縁に恵まれ、へき地・離島の産科医療に30年以上携わる伊藤雄二医師をはじめ、3名の産科常勤医を確保する予定です。新病院の開院は、 2016年11月を予定しており、2017年春より産婦人科診療開始、秋には分娩をスタートできるよう準備を進めております。
2016年4月現在、5万2千人弱の人口が暮らす恵那市には、安心して子どもを産める場所がありません。 市内の病院および行政機関には、産婦人科開設を願う声が多く寄せられてきました。 毎年実施する「市民意識調査」においても、人口減少を食い止める少子化対策として、産科・小児科の開設を求める声や、安心して子どもを生み育てていくために、産婦人科・小児科医療の充実を求める声が、全体の5割以上を占めてきました。また、市内の若者人口は減る一方で、平成9年より死亡数が出生数を上回り、その差は年々拡大しています。地域で安心安全にお産に臨め、子どもを育てやすい環境が整わない限り、この問題はますます深刻化するでしょう。 産婦人科開設は、このまちの未来を考えた際、早急に取り組まなければいけない大切な事業なのです。
私は、自然豊かで空気も綺麗なこのまちを、お母さんと赤ちゃんに優しい「ベビーカーの似合うまち」にすることが長年の夢でした。それがようやく実現しそうな今、次なる夢は、子どもたちが健やかに育ち、保護者の方が安心して子育てができる環境を整えることです。その第一歩として、子育ての総合相談窓口「えなっ宝(子)ほっとステーション」を設置いたしました。地域に暮らす親子が自由に交流し、日々の子育て経験を共有する場としてご活用ください。また、幼児教育の充実を目指して、市内の公立幼稚園・保育園を「こども園」に一元化し、ALT(外国語指導助手)による英会話教育を導入しています。
妊娠・出産から子育て期に至るまで、切れ目ない支援をいかに提供していくかが、今後の大きな課題です。
恵那市では、「健やかで幸せに暮らし続けられるまちづくり」を目指して、2015年に「健幸(けんこう)都市宣言」をしました。新しく生まれ変わる市立恵那病院には、産婦人科とともに、健診・生活習慣病予防に取り組む「健康管理センター」を開設する計画です。市民の皆様が健康に関心を寄せ、積極的に健康づくりに取り組めるよう、行政と連携した保健事業の充実を図っていきたいと考えております。
元気に遊び回る子どもたち、エネルギーに満ち溢れる若者、いきいきと健康寿命を延ばす高齢者、日本全国から「え~な~」と羨まれる健幸都市の実現を目指して、最大限力を尽くしていきたいと思います。